海水浴

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 幼い頃の夏の日、家族で海水浴に出かけた。
 一緒に遊んでいた両親は疲れて砂浜に寝転び、わたしは腰に浮き輪をつけたまま砂浜に一人座っていた。
「わたしルミちゃん。いっしょに遊ぼ」
 浮き輪をつけた女の子が笑いかけてきた。
「うんっ」
 わたしたち二人はぷかぷかと浮かんで遊んだ。
「ね、競争しよ」
 そう言ってルミちゃんがいきなり手で漕ぎ始めた。
「待ってぇ」
「早く、早く」
 ルミちゃんが振り返って笑う。
 一生懸命漕いでいると「こらっ行くなっ」と叫びながら父が追いかけて来た。
「遠くに行ったら危ないだろ」
 すごい剣幕で叱られたが、誰もルミちゃんを追いかけない。
 遠く波間に浮いていたルミちゃんがちゃぷんと消えた。
「ルミちゃん」
 泣いて指さすわたしを見て、父は青い顔になった。
 子供の頃、海で死んだ父の幼なじみがルミちゃんという名だったそうだ。
 あれから二度と海には行ってない。
ホラー
公開:18/05/03 19:27

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