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 列車は、新造されて廃車になるまで、何十年間も使用される事がほとんどである。
 何十年間も使用されていると、中には魂を持つ列車も現れるらしい。
 私もそのうちの一人だ。いや一両だ。というべきだろうか?たまにある点検という名の休み以外、毎日、同じ路線を走ってきた。いつからか運転手の顔や、景色を覚え、さらに、魂というものが、私の中に宿っていった。
 最初は、毎日同じ景色など、つまらない日々であった。それでも、運転手や車掌、乗客の様子など、いろいろ観察するうちに、毎日の出来事に興味を持ち出した。
 私が最も興味を持ったのは、人間には卒業というものがあり、列車の中で別れの涙。運転手や車掌の引退という卒業。その場面に立ち会えることがいつしか誇りになっていった。
 そのような日々が数十年続き、私も新型車に自分の立場を譲る日がきた。人はそれを卒業と呼んだ。
 最後の日、私の中に、花束が置かれてあった。
その他
公開:18/05/01 01:43

たかたかぼーい

文化センターで、ショートショート講座を受け始めました。
初心者ですが、よろしくお願いします。

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