後悔を生む食物

世界各国へ向けて声明が発表された。

「死にたくないのなら鱈を食べてはいけない。」

学者の研究によると、鱈を食べた者は、過去を振り返り、“あの時こうしていたら…”と後悔の念に駆られ続け、精神を病んでしまうというのだ。
声明発表後、日本のスーパーからは鱈の切り身はもちろん、たらこや白子も姿を消した。極秘にチーズ鱈を提供し続けた居酒屋が一斉摘発されたり、国民的アニメのキャラクターである幼児が養子に出されたりもした。しかしこのような騒動も一時のもので、今まで鱈を使っていた様々な料理は他の魚で代替されるようになった。人々は、まるでこの世界には最初から鱈という魚なんて存在しなかったかのように振る舞うようになっていった。

ところが、学者のさらなる研究によって、鱈と同様の症状を発生される食品があることが分かった。再び世界各国へ声明が発表された。

「死にたくないのならレバーを食べてはいけない。」