あめむし

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「あ、明日は雨だ」
彼が呟いた。
「わかるの?」
「うん、あめむしが飛んでる」
彼は右手で何かを掴む所作をした。
「ほら」
掌には、水色の小さな虫がのっていた。
「ゆきむしと同じさ。雨の前に現れる」
彼の口調は弾む。大学で昆虫の研究をしているのだ。
「最近は、雷むし、台風むし、なんてのも…」
彼は語りを続ける。時折不安になる。いつか「昆虫留学する!」なんて言って居なくなるのでは、と。
「虫が恋人だね」
わたしが呟くと、彼は言った。
「でも、明日が雨なら、出かけに傘をくれるのは君がいい。雷は君が怖がるから、一緒にいたい。ずっと、同じ家で」
そういうと、彼は指輪を取り出した。びっくりして、思わず涙が溢れる。彼はハンカチを取り出しわたしの目を拭った。
「用意がいいね」
「うん、今朝ね、泣きむしが飛んでたから」
わたしは彼の無邪気な頬を優しく叩き、そのまま包み込んだ。
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公開:18/05/01 21:07
更新:18/05/04 22:23

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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