かわいいかわいい僕の海

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どぶで海がしくしく泣いていたので、拾って飼うことにした。
とりあえず、家にあった金魚鉢に入れてやる。
「あ、ありがとう」
か細い声。海は女の子だった。手を突っ込むと赤くなった。
「え、なんで?」
「恥ずかしい」
驚いた。海は、空の色を反射しているんじゃなくて、感情によって色が変わるのだ。
「いつも青いのはどうして?」
「青は喜びの色。大好きな太陽さんが見えるから」
「夜に黒くなるのは、太陽が空からいなくなっちゃうからってこと?」
「その通り。黒は悲しみの色よ」
「じゃあ夕方に赤くなるのは?」
「一日に一回、太陽さんとキスできるから…って、言わせないでよ!」
ざぱんと赤い波が立った。僕は海のことがすっかり好きになってしまった。抱きたいと思った。でも、僕はあまりに小さすぎた。

翌日、金魚鉢はすっかり乾いていた。太陽の元へ飛んでいったのだろう。
僕は残った塩を指に取って舐める。ちょっぴり甘い。
ファンタジー
公開:18/05/01 19:34
更新:18/05/01 20:55

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