海は知っている。

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「この夕焼けを君にプレゼントするよ。大切な君だけに」
海は知っている。この男、今まで付き合った女全員に同じことを言っている。
「嬉しい」
頬を染める女。
海は知っている。この女、この夕焼けを見飽きている。
二人の距離が縮まる。
「俺の恵に何か用か?」
突如、厳つい男が現れ、女の肩を抱いた。
厳つい男の一睨みに男は慌てて逃げ去った。
「あっ…折角いいところだったのに…」
「残念だったな」
海は知っている。この二人、親子なのだ。
海は知っている。男は娘が心配でずっと見張っていたのだ。
「パパのバカ!」
男の腕を払い、肩を怒らせて歩く娘。男はそれを見守る。
「じゃ、帰るか。今日の晩飯は何かな?」
「カレーじゃない?そんな気がする」
海は知っている。この男の妻が今日カレーの材料を買っていた。
海は知っている。こんな日常こそが幸せなのだと。

海がそう感じていることを、山は森の水を便りに知っている。
公開:18/05/01 19:14

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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