画家が描いたものは

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画家が美しいと感じるのは自然だけだった。

だから描くのは決まって自然画で、そこに人は必要なかった。


ある日、画家のアトリエを1人の女性が訪ねてきた。

彼女は行商で、絵の具や筆を売って生きていた。

画家は彼女に会い、初めて人を描きたいと思った。

画家は彼女に、これから道具を買うかわり、モデルになってくれるよう頼んだ。

彼女は喜び、ほほえみをたたえてうなずいた。

それから毎日、画家はピンクのチューリップに囲まれる彼女を描いた。


彼女を自然のように描けるようになったある日、彼女は病に倒れてしまった。

余命幾ばくもないことを知り、画家は長く泣き続けた。

そして涙が枯れたとき、画家はもう一度彼女を描きたいと思った。

画家は赤いチューリップに囲まれた彼女を描いた。

その絵を見せると、彼女はほほえみをたたえて眠りについた。


その後、画家は生涯2度と人を描くことはなかった。
その他
公開:18/05/01 12:43
更新:18/05/01 14:04

rone

こんにちは。

1話完結型の物語が好きなので、自分でも書いてみようと思い立ちました。

普段はブログでくだらないことを書いてます、よろしければ息抜きにどうぞ→https://vctaqrone.com

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