あの日の

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 初夏だった。
 北国の初夏。
 七夕前日に、祖父は旅立った。
「おじいちゃん、今どこにいるの?」
 葬儀の準備に追われる中、幼い従妹の問いに「今日は七夕だから、きっと織姫様と彦星様と一緒にお空にいるよ」と答えたのを覚えてる。
 それから、数年。法要の時に従兄と姉と妹、私の四人で海へ出かけた。
 太陽は海に反射し、水面が光っていた。
 砂浜を歩き、足を浸すと、引く波が私の足の周りを砂と一緒にさらさら流れた。
 祖父は、今はどこにいるんだろう。
 この空には太陽が強くて、星の輝きは見えない。

 水平線が丸く見えた。
 丸く、果てしなく。
 それは、『環』を連想させた。

 ……そうだね。きっと、どこにいるかは関係なく。
『いつか』。
 そう、いつかは私もそっちに逝くのだから。
 全てを生み出す海に生死を全て委ねよう。
 私はゆっくりとその場を後にした――
その他
公開:18/04/29 07:33

メム( 北海道 )

思いついたままに、文字を綴る。

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