第41話「もう一度、別れの曲」

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おばあちゃんが死んだ。

亡くなるひと月前、おばあちゃんはピアノをくれた。その頃から少し体を悪くしていたが、それから早かった。
「親不孝もんが。どいつもこいつも」
通夜のあいだ、おじいちゃんは何度もそうこぼした。お父さんは勿論、お母さんも、結局日本に帰ってこなかった。
葬儀はあたしたち姉妹とおじいちゃん、それに近所の人たち数名でしめやかに行われた。お姉ちゃんは読経のあいだずっと泣いていたし、翠でさえしくしく泣き出したのに、あたしは涙が出てこなかった。あたしは、いつもそうなのだ。
家に帰り、翠はピアノを弾き始めた。おばあちゃんの好きだった、別れの曲。それを聞いていたら、あたしのバカになってる目から、やっと涙がこぼれて、少しホッとした。
亡くなる二日前の夜、ピアノがひとりでに別れの曲を鳴らしたことがあった。あれは、おばあちゃんだったのかも知れない。

ピアノはもうひとりでに鳴ることはなかった。
青春
公開:18/04/28 22:02
更新:20/05/20 15:29
三姉妹 ピアノ

射矢らた( 大阪 )

2018年2月8日SSG登録
Twitter:https://mobile.twitter.com/iruya_rata


<三姉妹シリーズ>
親もとを離れて暮らす三姉妹の暮らしを
ショートショートで綴ります。
長女・葵(あおい) 社会人
次女・茜(あかね) 高校生
三女・翠(みどり) 小学生

そのほか1話モノ。
 

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