もしもの水槽

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「もしもの時は」
それが口癖だった祖母が無くなり、ついに「もしも」が訪れた。
私は祖母の遺言通り、彼女が最期まで大切にしていた真っ黒な水槽を引き取ることとなった。
祖母曰く、この中には光を食べる金魚がすんでいるのだという。
墨汁のように真っ黒な世界でどう生きているのか想像もつかない。
けれど祖母の願いを叶えようと、言いつけ通り日の当たる窓辺に置き、時折水を足し続けた。

ある夜、部屋の明かりが消えた。
窓から外を見渡すも月明かりすらなく、ただただ闇が広がっている。
私は闇の中に取り残されてしまった。
と、その時、唯一光るものがあった。
祖母の水槽だ。
それは放つ光を強め、部屋を照らしていった。
初めて見る水槽の中で、大きな一匹の金魚が膨らんだお腹から光を放っている。
もしかしたらこの金魚も、祖母から「もしも」を受け取っていたのだろうか。
祖母が生きた時の光が、私の姿を闇から拾い上げた。
ファンタジー
公開:18/04/28 15:43
更新:18/05/01 11:37

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