水で溶ける壁

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その村に雨が降るのは年に一日だけ。未明からしとしとと降りだした雨は朝日が昇る頃には本降りとなり、一日中降り続く。

家に雨がかかる。すると家々の壁が溶けだす。彼らは水に濡れると溶ける壁で家を作っている。壁が徐々に溶け、骨組みがあらわになってくる。それを見る村人たちの顔はなんだかうれしそうだ。

翌日。雨はすっかり上がり、村中の家が屋根と柱だけになった。いやもうひとつ。家の横にはおびただしい数の水風船が積もっている。彼らは水で溶けた後その水を水風船の中に取り込む素材で壁を作っていたのである。

村人たちは積もった水風船をダムに運ぶ。水風船は割らない限り水が蒸発することはない。こうして一年分の水を貯蓄するのだ。

水風船を運び終わった村人たちは、また、水で溶ける壁を家に塗り始める。新しい一年をどんな年にしようか。どれだけ楽しいことがあるだろうか。ワクワクしながら新しい壁を塗っていく。
その他
公開:18/04/27 07:59
更新:18/06/09 20:14
不思議な言葉

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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