ナポレオンの辞書

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吾輩の辞書に不可能の文字はない。
それゆえにヤツが執拗に吾輩の口にいれることを拒んだ液体を隙を見て飲むことができる。ヤツはそれを大切そうにイカゲソと共に口に入れていた。イカゲソもいいのだけれど、本当のお目当はそちらの液体の方だった。
その液体を口にした瞬間、ぽーっと体が暖かくなった。なんだか心持ちがとても良い。
良い心持ちは、挑戦を喚起する。
吾輩はふらふらと大きな「池」のほうに向かう。
普段、大の風呂嫌いの吾輩だけれど、ここは1つ大きな挑戦をしてみる。
吾輩は出入り口を通過した勢いそのままに風呂にドボンと飛び込む。果てさて、足がつかない。そうして、吾輩は泳げない。おかしい、不可能はないはずでは?
吾輩は死ぬ。水面にはヤツの顔。最後に顔が見れただけでもよかった。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。

「何やってんだ、ナポレオン」
僕は溺れかかった愛猫を急いで風呂から救い出した。
その他
公開:18/04/26 22:16

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