泣くコンプレックス

いつからだろう。熱いものを食べると鼻水と共に涙が出てくるようになった。暑くても汗と共に涙が出る。

30分並んで入ったラーメン屋。食べながら泣いていると、カウンターの向こうから親父さんが戸惑った顔でチラ見する。不味かったのだろうか、あるいは美味しすぎて感動の涙を流しているのだろうか。そんな心の声が聞こえてきそうだ。すみません、熱いだけです。

夏、遅刻寸前で電車に駆け込む。扉が閉まった瞬間に汗が吹き出る。もちろん涙も。なんだこの女、何を泣いてるんだ。まるで俺が痴漢でもしてるみたいじゃないか。向かいの男性の心の声が聞こえてきそうだ。すみません、暑いだけです。

段々コンプレックスになってきて、外では熱いものを食べないようになった。鍋料理が出そうな冬の宴会は全部欠席。大好きな拉麺も、お取り寄せしたものを家で作る。

しかし、夏に外に出ないのは難しい。マスクのように涙を隠すものが無いだろうか。