天才児

ぼくは超天才児！
まだ生まれたての赤ん坊だから言葉は話せないけれど、世界中の誰よりも頭がいい。
それはね、人の心を読むことのできる「テレパス能力者」だからなんだ。この能力のおかげで、世界中の人々の知識を瞬時に自分の脳にインプットできるのさ──。

ある日のこと、ぼくは大天才の自分がこれからどういう運命をたどるのか興味を持った。で、世界中の脳につながって「未来予測」をしてみたんだ。
ある未来では神のように祭り上げられ、大戦争を引き起こす原因となった。また別の未来では、人類の怨みを買って処刑される運命だった。
何度も何度も別のシナリオを試してみたけれど、大天才の末路はすべて破滅につながるんだ。
破滅を回避する方法を考えに考えた末、ひとつの結論に達した。
ぼくは一生、普通の人間のフリをすることにした──。

｢あなたこの子ったら、めずらしく笑ってるわよ！」
｢フフフ、楽しい夢でもみてるんだろう」