泣く審判

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その競技の勝敗は、審判が泣くかどうかで決まる。
ルールは単純。テーマに沿った話をする。持ち時間は10分。審判の1m以内に近づいてはならない。それだけ。

今回のテーマは「感動」だ。感動いっぱいの話をして、審判が泣けば勝ち。もし複数の競技者で泣いたら、流した涙の量で決まる。

まだ誰も審判を泣かせていない。いよいよ最後の競技者(女性)だ。

いきなり、彼女はポケットから果物ナイフを出し、審判の側に歩み寄った。一瞬緊張が走る。きっちり1m離れたところで止まると、反対のポケットから玉葱を取り出した。

そして、玉葱のみじん切りの仕方を子供に教えた話をしながら、その玉葱を切り始めた。辺りに葱の匂いが漂う。

今度は審判が動いた。ポケットから防毒マスクを取り出し、装着したのである。さすがベテラン。リスク管理ができている。

結局審判は泣くことなく、ドローとなったのである。
その他
公開:18/04/27 19:41
不思議な言葉

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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