灰青色の手

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担任の先生は変わった人だった。
いつも灰青色のスーツを着ている髭面の大男だったが、おおらかな性格で、いつも穏やかな笑顔を絶やさなかったので生徒からは大人気だった。
担当する科目は地理で、赤道直下から北極まで世界中のどんな国や地域の話をするときでも、まるで自分が実際に旅してきたかの如く臨場感たっぷりの話をしてくれた。

卒業式の帰りに、クラスの生徒と先生みんなで近くの海へ出掛けた。
先生は最後の授業と称して生徒たちを砂浜に座らせ、世界の海について臨場感たっぷりの話をしてくれた。
卒業式らしく、みんなが大人になった時にこの広い世界に旅立てるように願っている、との言葉で授業は締め括られた。
授業が終わり、先生が解散の指示を出すと、生徒たちは名残惜しげにそれぞれの帰路についたのだった。

オレンジ色に染まった海を振り返ると、大きなクジラの尾が夕陽を背に、まるで手を振るように弧を描いていた。
青春
公開:18/04/26 15:22
更新:18/05/11 11:16

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

登場することが趣味です。

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