ソーダ玉

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ラムネのビー玉を取り出すと、なんだか指がシュワシュワした。中を覗くと小さな泡が次から次に湧いてきていて、まるで炭酸が閉じこめられているようだった。
「それはソーダ玉っていうんだよ」
見せてみると、お父さんが教えてくれた。ビー玉の中には、ときどきラムネの炭酸が移るものがあるらしい。
「珍しいから大切にな」

ぼくはその宝物で、いろいろなことをして楽しんだ。
お風呂に入れると、泡が出てきて気持ちよかった。ジュースに入れると、たちまちそれは炭酸入りに変化した。ただ持つだけでも何だか涼しい気持ちになった。
そしてある日、ぼくは新しい遊びを思いついた。シャボン液に入れてみようと思ったのだ。
用意したその液に、ぼくはソーダ玉をそっと入れた。するとすぐ、小さなシャボン玉が飛び立ちはじめた。

やがて視線をあげたとき、ぼくは思わず息を呑んだ。
日差しを浴びて現れたのは、虹色に染まった空だった。
ファンタジー
公開:18/04/26 13:14

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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