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「馬肉猫」を知ったのは馬肉専門店に行った時だった。
カウンター越しに出された鍋を覗くと、盛られた野菜の上に生肉の塊が乗っている。
しばらく見ていると肉の桜色がだんだんと褪せていき、猫の形だとわかった。
どうやら薄切りの馬肉を重ねて作った猫らしく、野菜の中からひょこっと顔を出している姿が愛らしい。
さらに驚いたのはその後で、煮えるにつれて模様が出てくるのだ。
「こんなに見事な毛並みが表現できるなら、本物そっくりの猫もできそうですね!」
茶トラ猫の頭を箸先で撫でながら言うと、店主は困ったような顔をして言った。
「一度、やってみたんだけどねぇ」
昔飼っていた猫をモデルに作ってみたら、今にも動き出しそうなほどの出来栄えだったらしい。
「ただ……」
苦く笑いながら店主が呟く。
「猫の姿をしていても桜肉だ。偽物だって気づくと切なくてねぇ」
目の前の馬肉猫がほどけて、ゆっくりと溶けていった。
カウンター越しに出された鍋を覗くと、盛られた野菜の上に生肉の塊が乗っている。
しばらく見ていると肉の桜色がだんだんと褪せていき、猫の形だとわかった。
どうやら薄切りの馬肉を重ねて作った猫らしく、野菜の中からひょこっと顔を出している姿が愛らしい。
さらに驚いたのはその後で、煮えるにつれて模様が出てくるのだ。
「こんなに見事な毛並みが表現できるなら、本物そっくりの猫もできそうですね!」
茶トラ猫の頭を箸先で撫でながら言うと、店主は困ったような顔をして言った。
「一度、やってみたんだけどねぇ」
昔飼っていた猫をモデルに作ってみたら、今にも動き出しそうなほどの出来栄えだったらしい。
「ただ……」
苦く笑いながら店主が呟く。
「猫の姿をしていても桜肉だ。偽物だって気づくと切なくてねぇ」
目の前の馬肉猫がほどけて、ゆっくりと溶けていった。
その他
公開:18/04/24 11:31
言葉遊びや少し不思議なお話が好きです。
SSGプチコン1「花」優秀賞入賞
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