馬肉猫

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「鹿は紅葉、猪は牡丹」
そして、「馬は桜」
獣肉にはそれぞれ花の別称がある。
の、だが。
可笑しいと思わないだろうか。
血の滴る獣の肉が、真っ赤に染まる紅葉や牡丹ではなく、薄く色付いた桜などと呼ばれていることに。

その昔、ある村でさくらと言う猫を飼っている少女がいた。
彼女はさくらを可愛がったが、ある年の飢饉の末、少女の両親は生きるためにさくらを鍋にしてしまった。
もちろん少女には告げず、斜向かいの馬を分けてもらったと言って。
さくらは死期を悟り姿を隠したのだろうと言って。
けれど飢饉が過ぎた後、ついうっかりと「さくら肉のおかげで助かった」と父親が口を滑らせた。
それからだ。馬肉が桜肉と呼ばれるようになったのは。
その少女が、「桜肉」の呼称を広めていった。
薄々、勘づいていたのかもしれない。



その少女は今、浅草にいるらしい。
あの時の味を再現した、馬肉料理店をやっているんだとか。
ホラー
公開:18/04/24 03:51

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