魚と缶詰

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ピカピカと光りながら降りてきた缶詰に恋をした魚がいた。魚は言った。
「綺麗だわ。あなたはどこから来たの?」
「転覆した貨物船から落ちたのさ。僕だけじゃない、何万という仲間が落ちたはずだ」
そう言った缶詰は、不意にくしゃりと形を変えた。それを見て魚は喜んだ。
「素敵。そんなこともできるのね」
缶詰は答えなかった。代わりにその体をよじるようにすると蓋が開き、中から輪切りのパイナップルがいくつも飛び出した。あたりは闇に包まれていたが、魚は匂いで嗅ぎつけた。
「まあ、これをくれるの?」
魚はパイナップルをみな食べてしまった。缶詰は消え入るような声で言った。
「食べてくれたんだね。それを誰かに届けることが、僕たちの使命だったんだ。全うできて嬉しいよ」
話しながら、缶詰の声も、缶詰そのものも、小さく小さく潰れていった。
缶詰を見失った魚はしばらく暗い海底を彷徨っていたが、また光に向かって泳ぎ始めた。
ファンタジー
公開:18/04/24 22:30
更新:20/05/20 15:38

射矢らた( 大阪 )

2018年2月8日SSG登録
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<三姉妹シリーズ>
親もとを離れて暮らす三姉妹の暮らしを
ショートショートで綴ります。
長女・葵(あおい) 社会人
次女・茜(あかね) 高校生
三女・翠(みどり) 小学生

そのほか1話モノ。
 

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