海川

2
144

雪国のとある村。山と川に挟まれたその村は、平地のほとんどが田んぼになっている。
そのため村では河川敷を利用して畑を作っている。

春、山の雪が溶け始めると雪解け水が一気に川に流れ込む。
川の水は溢れ、堤防一杯まで水が押し寄せる。川幅が普段の倍以上になり、水面には波しぶきが立つ。その様は、川と言うより海のようだ。

「せっかく作った畑がすべて水の下に沈むんだよ」
祖母が寂しそうにつぶやく。

水が引いた河川敷を耕し、作物を植え、収穫をする。畑の上に雪が降り、春になると畑は水に飲み込まれていく。その繰り返しだ。
しかし悪いことばかりではない。山からの栄養を含んだ水が河川敷を潤し、次の畑に生きてくる。

海のような川のおかげで、また新しい豊かな年が始まるのだ。
その他
公開:18/04/24 21:22
プチコン2

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容