馬肉猫

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「馬にも猫にもなれるスーパーフードよ」
目の前に置かれたのは『馬肉猫』と書かれた缶詰だった。
仕事でミスばかりする私に、先輩が営業の必殺アイテムとして1缶くれた。
「私たち営業は馬並みの体力とスピード、そして猫のような柔軟性としたたかさが必要なの」

私は半信半疑で取引先と接待がある夕方、休憩室で馬肉猫を食べた。
味は、豚の角煮のように甘辛かった。

接待の席で私は驚くほど甘い声をだした。とことん呑んだ。
小悪魔的に男性陣をまどわし、確実に距離を縮めた。
「じゃあ浄水器は全部、君のところにお願いしようかな」
その言葉に私はあれ? と思った。うちの会社は浄水器なんて扱ってない。
私はハッとした。テーブルの上のアジの干物につられ、トイレから戻る途中違う席に座ってしまったのだ!
私は駿馬のごとく自分のテーブルに駆け戻り、そしてぴょんと取引先の膝の上に乗った。

まるで何事もなかったかのように。
青春
公開:18/04/24 19:03
更新:18/04/24 23:13

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