死因

今日もこの病院に遺体が運び込まれる。
これまでと同じように亡くなったのは女性だ。
ある日を境に、この日本を中心に突然死が多発するようになった。
亡くなるのは主に若い女性。男性も少なからず亡くなることはあるが、これで亡くなるのは圧倒的に女性が多い。
原因が分かっていても止められないこの突然死に、医者はもちろん国としても頭を抱えていた。
ウンザリとした気持ちで今日運ばれてきた遺体を確認する。
ああ…今日もやはり死因は同じだ。一目見て分かる。
亡くなった女性は幸せそうな顔をしていた。目にハートが浮かんでいる。
「先生、やはり今回も…」
「ああ、いつもと同じ『キュン死』だ」
キュン死。バカみたいな名前だとつくづく思う。
カッコいいものや可愛いものを見て、胸がきゅんと高まり、それで死に至るという何ともバカげた死因。
これを止める手立ては未だに見つかっていない。