お金嫌い

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久知野という文学者は、お金が嫌いな事で界隈では有名だった。
「お金は生活最低限あれば良い。持ちすぎてはバチが当たる」
彼の持論では、常にお金を持つ事について疑問を投げかけている。
その哲学は文学界だけでなく様々な分野に派生し、世間に浸透していった。

ある時、久知野は権威ある文学賞を受賞した。
「受賞は素直に嬉しい。しかしこんな賞金を頂いてしまっては泥棒に狙われるリスクが増えてしまうだけではないか」
お金の事を常に説いてきた久知野らしいスピーチだと、笑い話として話題となった。

久知野が亡くなった今でも様々な研究がなされ、多くの書籍も出されている。
「私の本で金を稼ごうというのか」
もしまだ生きていたら、そんな皮肉を言っているだろう。
ただ何よりも皮肉なのは、久知野という人物の知名度やその功績が認められ、お札の肖像として選ばれてしまった事なのかもしれない。
公開:18/04/22 12:00

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