波打ち際の、私と海

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失恋したその足で、海に向かった。波打ち際に座り込み、砂に彼の名前を書く。
未練がましく何度も刻まれる彼の名前を、海は優しく洗い流してくれた。
「また恋ができるかな」そんな弱気な私の気持ちも、海は洗い流してくれた。そして、真っさらな砂浜の代わりに「必ずね」という返事をくれた。

「本当に?」
「本当よ」
「それはどんな恋?」
「秘密」
「ケチ!」
「ふふふ」

「また来るわ」というメッセージに、返事はなかった。そう、またここに来よう。美しい砂浜のあるこの海に。今度は、新しい恋の相手を連れて。
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公開:18/04/22 22:49

小狐裕介

作家としてショートショートや短いお話を書いています!

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光文社文庫「ショートショートの宝箱」に「ふしぎな駄菓子屋」収録。
幻冬舎「未来製作所」に「砂漠の機械工」他収録。

最近はYouTubeも頑張っています!

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC86ZZ2gKNICqbOQ7flwUT0Q

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