マーブル

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僕らが家族を失ったのは小学校に入る前だった。僕はタイムカプセルに感情の一つの要素である“喜”を、兄は“哀”を詰めて庭の深くに埋めた。

学生時代は散々なもので、眉間に皺をよせる僕はよくからかわれた。
対して兄は目尻に皺をよせて笑うので、友人も多かった。
「どうして笑わないんだ?」
「なんで泣けないの?」
僕らの会話は次第にちぐはぐになり、昔みたいに遊べなくなった。

「そろそろ掘り返さないと腐っちまうからな」
僕が高校を卒業する頃に、実家に戻った兄と再び庭の隅を突いた。
カプセルは案外すぐに見つかった。

兄は泥を被った10年ぶりの“哀”を胸のあたりに押し込めた。すると堰を切ったように涙を流した。
僕が“喜”を頭に押し込むと、強い痺れと共に、笑い声が喉を熱くした。
「だから泣いていたのか」
「だから笑えたんだね」

僕らは次の日の朝食に、マーブルパンを食べた。
「うまい」と口を揃えた。
SF
公開:18/04/20 00:39

ばぐすけ( osakaaa )

おひまつぶしに

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