死神2

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死神は驚いていた。

予想だにしていない反応だったからだ。

死神は尋ねた。

君は私が怖くないのか、と。

小さな命は不思議そうに首をかしげたあと、また小さく微笑んだ。


私は嬉しかった。

私はずっとひとりぼっちだったから。

私はずっと恐れられていたから。


私の胸の中に小さな痛みが走った。

それは鈍く、ひどく奥の方にあった。


私はその痛みの正体に気づいていなかった。

私を見て微笑む小さな命と、その不自然な傷はひどく不釣り合いだった。

私は生まれて初めて鎌を振るうことを止めた。


小さな命はまた私を見て微笑んでいた。

私は何も考えることなく、ただ終わりを告げてきた。

いつ生まれたのかも知らず、何故鎌を振るうのかも考えたことが無かった。


私は少し悩んだあと、小さな命をしばらくそばに置いておくことに決めた。
その他
公開:18/04/19 23:06

ぽえる( 高知県 )

どこか足りない。そう思いながらもつぎはぎの言葉を繋ぎ合わせてしか伝えられない。その不器用さが、その物足りなさが、そのふがいなさが、その切なさが、たまらなく愛しい。言葉っていいな。ことばっていいな。

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