リトル・グレイの肖像。

3
158

リトル・グレイは孤独であった。
独り宇宙船に乗り、月の陰から地球を観察しなければならないからだ。
唯一の娯楽と言えば、地球の本を読む事であった。

ある日、彼は名前の共通点に惹かれ『ドリアン・グレイの肖像』という小説を読んだ。

粗筋はこうである。
『美少年ドリアン・グレイは画家に肖像画を描いてもらう。美しかった肖像画はグレイの内面を表すかの如く醜く年をとるが、何故か彼自身は若く美しいままで……』というものだ。
リトル・グレイも早速、地球の画家をアブダクション(※宇宙人による誘拐)し、自画像を描かせた。
するとどうだろう、地球と環境が違うせいか、グレイより先に肖像画の方が傷み始めた。
キャンバスが綻び、絵の具に徐々にヒビが入ると、彼の皮膚にもヒビが入った……。
次第に絵の具が色あせ、粉々に剥がれ落ちる頃──。

船内からグレイの姿は消え、無人の宇宙船だけが今も月の陰から地球を見守っている。
SF
公開:18/04/19 21:02

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki



 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容