オムライス定食

職場の先輩から勧められた定食屋の1日1食限定の裏メニュー、オムライス定食には1時間時を止めるサービスがつくそうだ。

ここ最近繁忙期で、昼休みは5分で昼食を流し込んでいた。
もし1時間あれば、ずっとカバンに入ったままの漫画の最新刊が読める。

「オムライス定食ください」

オムライスを食べ終わると、店の人々の動きが止まった。店の外に目をやると、静止画のような風景が広がっていた。
今、動いているのは定食屋のおばちゃんと僕だけだ。

僕が漫画を取り出そうとするとおばちゃんが声をかけてきた。
「あんたこの辺で働いてるの」
「はい」
「いくつだい」
「32です」
「あらー、そうなのー」

おばちゃんの話は止まらない。
「うちの旦那が35で亡くなってね、そこから女手一つで子供2人育ててほんとこの店出すまで大変だったのよ」

結局、まるまる1時間おばちゃんの身の上話を聞かされて、僕は定食屋を後にした。