戦慄のビオラ

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男は最愛の婚約者に酷く振られた。相手が別の男を作り駆け落ちしたのだ。
それからというもの、仕事も手に付かず、元々趣味だったビオラに固執するようになった。
「旋律は裏切らない。あのアバズレ女のようには…」
男はビオラに夢中で、仕事もまともに出来やしない。
街のバーを周り、ビオラを弾いては日銭を稼ぐ毎日になっていった。
「聴け!この私が奏でる美しい旋律を!」
男はまともな格好も出来ないほどに金に余裕が無くなってきた。それでも不思議と仕事はぽつぽつと絶えなかった。
「ほら!美しい旋律でしょう!本日はわたくしのショーを聴いて下さりありがとうございます!」
ヨレヨレに薄汚れたベストとハットでお辞儀をする男。

「おい、あれはなんだ」
「女に捨てられて狂っちまった男が、音のズレたビオラを得意気に弾くのを面白がって、みんな投げ銭をしていくのさ」
その他
公開:18/04/19 16:23

白梅 弥子

純粋で腹黒で素直なひねくれ者です。
ホラーやSFを中心に、様々なジャンルで書いていきたいと思っております。
twitter @yakoz85
https://twitter.com/yakoz85?s=

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