留守電

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消せないメッセージがある。

昨年他界した父からの電話。認知症のため施設に入っている母が元気だったころの声。

これらのメッセージが入っているため、録音時間が1分しか残っていない。ほとんど留守電としての役目を果たさなくなった留守電。

でも良いのだ。
他に残しておきたいメッセージなどないのだから。

「今回も美味しそうなものが届いたよ、ありがとうな」
「元気?風邪ひいてない?お父さんと美味しくいただいたから」

会いに行かず、物だけ送って誤魔化していた私を責めることなく、いつも温かい言葉を残してくれた。

そうだ、遺書に書いておかないと。
『私が死んだら、棺に留守電のテープも一緒に入れてください』と。

でもそんな必要ないか。
きっと笑顔で「やっと来たのか」と迎えてくれるだろうから。
その他
公開:18/04/16 22:23

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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