彼とコーヒー14

0
130

ああ、暇だ。私はベッドの中にもぐってスマートフォンを触っている。彼と出会って、私は暇をはっきりと自覚するようになった。それまで暇は暇でなく、一人の時間は長ければ長いほどよかった。漫画を読むことも映画を観ることもできた。それらが楽しいものであることに変わりはないのだけれど、自分の心が大きく動く現実を知ってしまった。もう完全に元には戻れない。戻るべきではない、ということも。
「何かを得ることは、同時に、何かを失うことだよ」
彼の言葉を思い返す。私が得たもの、そして同時に失ったもの。どうして比べようがあるだろう。未練というのはいつだって残るものだ、と私は思う。すくなくとも、選択を間違えたために生じるものではない。
「なんか、切ないね」
声にすると、足りない、と私は思った。一方で、形容詞って便利に響くなぁなどと考える。すこしの痛みを感じて目を閉じる。大丈夫。心の中で呟く。夢の世界に落ちる音がした。
その他
公開:18/04/16 08:30
更新:18/04/16 11:35
短編 ショートショート 小説 400字物語 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容