綺麗な桜の下には死体が埋まっている

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こう言ったのは誰だったか。
僕が考えていると、ブルーシートの上で弁当と酒を車座で囲っている中で部長が言った。
「新人、昨日の夜から取ったわりに時化た場所だな」
「すみません」
「田中先輩がいないね」
憧れの佐藤さんが安心して言うので僕は頷いた。田中先輩が佐藤さんにストーカーまがいのことをしているのは社内でも噂だった。事実、彼女の電話番号を条件にすれば花見の席取りの手伝いにくるくらいには執着していた。
「交際を断ったのに……頭が硬いのよね」佐藤さんが眉を寄せた。知っている。何度も殴ったからだ。
既に酔っている部長が笑って言った。「おい、桜の花が小さいぞ」
「どうしてかしら、確かにこの桜だけ元気がないね」佐藤さんが言った。
どうしてか、僕は答えに思い当たった。まだ生きているのか。
汚い桜の下には生きた人間が埋まっているのだ。
「来年はきっと綺麗な桜が咲きますよ」
ホラー
公開:18/04/13 00:46

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