字漢泥棒

近頃巷で妙な事件が流行っている。
今もその事件の対応中だ。
「で、今回の被害は？」
「はい、1丁目の良川さんのお宅で急にガラス容器が溶けてしまったそうです。」
「ん？1丁目の良川さん？
…あぁ、なるほど。浪川さんだな。」

そう、事件というのは、漢字の一部分を盗むというものなのだ。
今回はさんずいを盗んでガラス容器にくっつけたせいで「容」器が「溶」けたんだな…。

「で、今回も犯人は見つからずか…」
「何せ盗まれるのが漢字ですからね…お手上げですよ…」

被害は大した事が無く、愉快犯なのだろうが、放っておくわけにもいかない。

あぁ、可愛い娘が家で待っているというのに…奴のせいで帰りは夜中ばかり、休みも出勤だ。
「ったく、あいつはとんだ寺門泥棒だな」

…ん？しまった、あいつ、俺の漢字まで盗んでやがる！
俺の「日」を返しやがれ！