かみ隠し

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人に知識を提供する仕事をしている。
必要とされれば各地に出向くし、1ヶ所に何週間も滞在することもある。
提供するジャンルは多岐に渡り、各専門家が所属している。
見た目も中身も個性的で面白いやつらだが、頑固なまでに中身はずっと変わらない。
それでも新旧の面々がこれだけ揃っているところもなかなかないので居心地は悪くない。

ただ、時折、忽然と誰かがいなくなる。
所属年数は関係なく、神隠しのように突然。
仕事場は専門分野ごとにきっちり分かれており、1フロアごとに整然としているため、誰かがいなくなればすぐにわかる。
肩を並べる同僚たちとこっそり囁き合うのは、数ヶ月前にいなくなった古株の話。

そんな矢先、影の気配がしてふと隣を見ると、同僚が消えていた。
そして自分の後ろにも、誰かの手。
指先が触れ、すっと引かれる感覚。
遠ざかる見慣れた景色。


見知らぬ手が背表紙に触れ、そっと表紙を開いた。
ミステリー・推理
公開:18/04/13 17:38

天宵 遥

言葉遊びや少し不思議なお話が好きです。
SSGプチコン1「花」優秀賞入賞

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