にゃんこ物語

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この家には天井がなかった。
白い雪は僕たちを刺すように降ってくる。でも兄さんと姉さんがいるから、あったかいんだ。

朝。天井からのぞくおじさんの顔。
「おまえ、かわいいな」
おじさんはそう言い、白ネコの兄さんを抱き抱えて、去っていった。
しばらくすると、香水の匂いがする女の人の手が入ってきて、茶トラの姉さんを掴み上げた。若い女の人だった。
その人は僕に「ごめんね」と何度も謝って、姉さんを連れて行ってしまった。

ひどく寒い夜が続いた。家にあった缶詰はもう匂いもしない。
兄さんたちはなにか食べてるのかな。
僕は黒いから嫌われてるの……。
その夜の星はぼんやりしてきれいじゃなかった。
僕はもう死んじゃうのかな……。

目が覚めると、天井のある部屋の中だった。僕の前には、あたたかいスープとおばさんの笑顔がならんでいた。
「きょうからウチの子よ。よろしくね」

僕はその時、はじめてニャーと泣いた。
ファンタジー
公開:18/04/13 12:09
物語 兄弟

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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