木星のかまぼこ

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木星より「使者」が現れた。
それは星の生産物である平らな木片と、食料である脊椎動物亜門のすり身の練物を乗せていた。
使者の目的は太陽系の2つ内側の星の猿の生態を調査するためだ。
使者は早速、猿と出会う。
猿は何故かよだれを垂らす、そして使者に飛びかかる。油断していた使者。少しだけ掠められたすり身を猿は嬉しそうにねぶる。使者はそれ以降、猿を警戒するようになる。
しかし、観察は続ける。
使者の食料も残すところわずかとなり、使者は故郷へ戻る準備を始める。
そんな折、大きな隕石が地球に降り注ぐ。大雪が幾日も降る。猿は洞窟の中で飢えに耐える。隅に生えた草で凌ぐも、やがて動かなくなっていく。
使者は猿にそっと近づく。猿は必死に手を伸ばす。汚い爪ですり身を剥ぎ取り口に放り込んで行く。
暖かくなった頃、猿は亡骸を石斧で音を出しながら会話を楽しむように偲んだ。
後世、人はそれを太古のまな板と呼ぶようになる。
SF
公開:18/04/10 22:20

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