晩飯はたこやき

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一匹の蛸が押入れから這い出てきたので、
驚いた私は一升瓶をとり落してしてしまった。
ベランダから野良猫が目敏く狙いをつけ、蛸に飛びかかった。
酒の染みた畳の上で、猫と蛸が取っ組み合っている姿に呆然としていると
蛸の目がこちらを睨み、口を開いた。
「昼間から酒飲んでんのかよ、あんた。こちとら死にかけてんのによ。だいたい…」
蛸の足が次第に赤く、鈍くなっていく。酒を蛸が吸い取っているのだ。
「ん、こりゃ、ええ酒だな、そんれも、昼間からてのは感心しねぇ…」
猫の鋭い牙が蛸の足を食い千切る。
「ん、いんや何も痛まねえ。これは素晴らしい薬ら…」
猫の爪に引き裂かれ、それでも尚赤く染まる蛸は次第に何者かに変わってゆく。
「いやあ、おでは死ぬ、いんや、生まれ変わるろ!あらららっ、見ていてくれ、なあ、あんた、なんか言ってくれねえか」
「黙れタコっ」
蛸は墨で畳を汚し、弾けて消えた。
猫は遊び疲れたようだ。
その他
公開:18/04/10 21:40

ばぐすけ( osakaaa )

おひまつぶしに

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