最終試験

「今日で最後だ。お前にも実践をしてもらう。」
「はい！」
「よし。いいか、お前も分かってると思うが、こういうのはタイミングが大事なんだよ。誰でも良いって訳じゃない。これを見誤ると後々大変になるからな。」
「はい！」
「なるべく優しそうな奴に狙いを定める。あとはこれまで教えてきた通りにやれ。今日は雨だが雨の日は実践にもってこいだ。準備が整ったらタイミングを見て行ってこい。」
「はい！」




土砂降りの帰り道。
今日は最悪の1日だ。

「にゃーん。」
段ボールに入った猫が寂しそうに鳴いている。
動物にはそこまでの興味はなかったが、ふと立ち止まってしまった。
ずぶ濡れの猫と目が合う。
「にゃーん。」
俺に何かを訴えかけているかのように鳴いている。
「にゃーん。」
俺はずぶ濡れの猫を、持っていたハンカチでそっと拭いてあげた――。


「そこまで行けばきっと上手くいくだろう。合格だ。幸せにな。」