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山のてっぺんで飛び跳ねる兎に狐が言いました。
「そんなに月が欲しいなら僕が捕まえてやるよ」
「本当?」
「そのかわり僕の食べ物をいっぱい取って来てくれよ」
「うん!」
兎は大喜びで山を駆け回り沢山の木の実を集めました。
山のてっぺんに戻ってくると狐が丸い桶を抱えて待っていました。
「今ちょうど月を捕まえた所なんだ」
驚いて桶を覗くと桶に入った水に月が映っていました。
「ホントだ!ありがとう!」
狐は慎重に桶を兎に手渡しました。
「月はすばしっこいから、目を離しちゃダメだよ。くれぐれも空を見上げちゃいけないよ」
「うん」
兎は桶を抱えて山を降りました。
しかし、もう少しで家に着くという時、木の根元に足を躓いてバランスを崩し桶をひっくり返してしまいました。
兎は急いで桶を覗きましたが、月はもうありません。
兎はがっかりして天を仰いで、あっと声を上げました。

「もうあんな所まで逃げちゃった」
その他
公開:18/04/11 22:14
更新:18/04/11 23:04
月の文学館

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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