虹を渡った男

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昔、ある街に虹がかかった。街では、虹の反対側には宝石の山があると信じられていた。しかし、空ほど高い虹を登る勇気を持つ人はいなかった。
ある男を除いては。
宝石の噂を聞き、男は命綱も無しに虹の橋を越えた。そこには噂通り宝石がザクザク。男は夢中でかき集めた。
しかし帰り道、宝石が重たく足元はふらふら。
のろま足で登っているうちに、虹はうっすらし始めた。その場で宝石を手放し戻ればよかったものの、男は強情だった。
男が真ん中まできた時、とうとう虹は消えてしまった。男は仰天、両手いっぱいに抱えていた宝石をばら撒いて、ひゅーるると地へ落ちていった。

ばら撒かれた宝石はそのまま空に取り残され、夜にはキラキラと寂しそうに輝く。
さて男はどうしたか。彼は今でも、空の宝石が誰かに盗られることを恐れている。だから、虹がかかる前には必ず雨を降らせるんだ。虹の橋が雨でつるつる滑って、誰も登って来られないように。
ファンタジー
公開:18/04/11 21:30
更新:18/04/11 22:31

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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