光の記憶力

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「すごい父さん、遠くの星もはっきり見えるよ」
「はは、そりゃ望遠レンズ作りが父さんの仕事だからな。それは望遠鏡と言って遥か昔の人が星を見るのに使っていた道具だが、レンズは最新のものだ」
息子の誕生日に、望遠鏡を作った。買ったものよりも、時間と手間を掛けたものをあげたかったからだ。
「うわぁ、この星綺麗」
見て、と息子が促すのでレンズを覗く。
「ああ、この星は今はもう無いんだ」
「?」
「空に輝く星はな、実は凄く遠くにあるんだ。光は速いが、それでも何万年もかかる程の距離がある。だから、光の映像がここに届く頃には、その星は消えていたりする」
「へぇ、じゃあ僕は光が一生懸命憶えていてくれた事を教えて貰ってるんだね!光の記憶力凄いな」
「光の記憶か。成る程。因みにその星は2万光年離れていてな。惑星探索隊の報告では、160年前に太陽の膨張による引力変化で引き寄せられ、燃えてしまった地球という星だよ」
SF
公開:18/04/09 11:08

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