彼とコーヒー9

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土曜日。私は目覚まし時計より先に目覚める。彼に会える。そう思うと早寝早起きになった。健康的という言葉が前よりもすこし似合うようになったと思う。
「素直に表現するようになったね」
彼が微笑む。どうやらうれしさが全面に滲んでしまっているらしかった。私はなんだか恥ずかしい気持ちになる。
「伝えたいときに伝えておかないと、もったいないと思って」
言ってから気づく。以前、私はこんな言葉をつかわなかったということ。最初から諦めていたのだ。どうせ誰にも理解されないと拗ねていた。幼い子どもみたいに。ずっと引きずったままで、いじけて、自分のことばかり気にしていた。本気で人を愛せるはずがなかった。彼が見せてくれたのは人間対人間の関わりであり、私が長いこと蓋をしていた部分に触れた。何を言われても嫌いになったりしない。それは魔法みたいに私の心を落ち着かせた。
「いいこと言うじゃん」
もっと、彼を笑顔にしたかった。
その他
公開:18/04/10 15:58
更新:18/04/10 16:02
短編 ショートショート 小説 400字物語 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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