木と鳥

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「この世は舞台、人はみな役者である」とは誰の言葉だっただろうか。
もしそうなのだとしたら、俺の役はきっと木だ。人が余ったから。演技が下手だから。
色んな理由はあるだろうが、地味で冴えない役だ。

普通の大学を卒業し、普通にサラリーマンになり、普通に暮らしてきた。
唯一の楽しみと言えばバーでこうしてゆっくりウィスキーを飲む事くらいだろうか。

「ねーお兄さん、無口って言われない?」
「はぁ…」
話しかけてきたのは舞台のお姫様のような、美しい女性だ。
「女の子が1人飲んでるんだからもっと話そうよー。」
「あまり慣れてなくて…。」
静かに飲みたいな。俺には眩しすぎる。
「でもさ、お兄さんみたいに落ち着いた人好きだよ。周りの男は騒がしくて」
そりゃ王子様には事欠かないだろう。
「ねぇお兄さん、少し愚痴聞いてくれない?」
急に真剣なトーンになった。
…たまには美しい鳥の止まり木になるのも有りか。
その他
公開:18/04/10 00:25

WAかめ( 山の中 )

ぽやぽやと思い付いた物語を書いております。素晴らしい作者の皆様の作品を読みながら勉強中の万年初心者。よろしくお願いいたします。

マイペースに投稿再開していければ良いなぁと思ふ今日この頃。

不勉強なもので、もしどなたかの作品と似た内容を投稿してしまっていた場合はご指摘頂けますと幸いです。
 

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