彼とコーヒー8

0
146

理由の説明しようがない涙を、大人になってまで流している。泣いたらいいと彼は言う。肯定は人を救うのだと私は思う。これからも覚えておきたい。別の誰かを肯定できるように、次にバトンを繋げるように。
「俺が渡したことを、今度は君が誰かに渡してあげなくちゃいけないよ。そうやって、世界は回っていくからね」
循環。頭の中に丸が浮かぶ。それはとても美しいものに思えた。ほんとうにそんな風に成り立っているのだとすれば、この世界は案外わるくないのかもしれない。
「渡せる人になる。約束する」
正直、今はそんな余裕ないけど。小さくつけ足すと、それでいいよ、と彼は笑った。人生に目標などなくてもいいと思っている私に、ひとつ目標のようなものができた。それでほんのすこしくらい不自由になってもいいと思った。自由をなにより大切だと信じている私にとってそれは一大事のはずだった。けれど心はちゃんと静かで穏やかだ。大丈夫の合図。
その他
公開:18/04/09 22:19
更新:18/04/10 13:45
短編 ショートショート 小説 400字物語 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容