彼とコーヒー4

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どうしたって滲んでしまうから、私は言葉を注意深く扱う。だからいつも緊張している。音楽。なぜか昔から歌が好きだった。今になって思えば、言葉として語る勇気のない、心の中にうずくまっているものを放出したかったのかもしれない。歌詞にすればなんでも言えた。気持ちよくてゆらゆら、横に揺れながら大きな口を開いた。

やさしい歌声。私はそう言ってすぐに違和感を感じた。全然表せていない。でも、そうとしか言えない。
彼の青春のそばにいた曲を、当時の感情といっしょに伝えてくれる時間はとても幸福に思える。

彼は私によくこう言った。
「うまく言えなくてもいいから、言葉にしてごらん。そうやって、作られていくものだから。ゆっくりで大丈夫。それで嫌いになったりしないよ。いい子でいようとしなくて、いいからね」
歌声とおなじだ、と思う。不安を煽る文句がはびこるこの世界を、すこし信じてみたいと思った。
その他
公開:18/04/07 17:06
更新:18/04/08 22:00
小説 短編 ショートショート 400字物語 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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