現世旅行

天寿を全うした私は、天国にいた。
天国での生活も慣れてきた頃、1通の手紙が届いた。
24時間限定で幽霊としてこの世に旅行に行けるという内容だった。
生前相撲が好きだった私は真っ先に国技館を希望し、相撲の観戦をすることに決めた。

生きている間なら絶対にできないことも幽霊にはできると考えた私は、人には見えないし触れられないのをいいことにせっかくだからと土俵の上から観戦をすることにした。
東側、西側それぞれから悠々と2人の力士が土俵に向かって歩いてくる。
いよいよ始まる、そう考えると心臓の鼓動が早まるような気がした。
まぁもう動いていないのだが。

土俵に上がった力士は清めの塩を掴み、土俵に撒いた。
その瞬間、大量の塩を頭からかぶってしまった。
幽霊に清めの塩がかかってしまえばその後のことは分かりきっていた。
次にこの世に行けるのは5年後だそうだ。
私の好きな力士は現役でやっているのだろうか。