彼とコーヒー3

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3ヶ月。彼に出会ってからもう長いこと経つような気がするのに、現実の時間の流れは不思議なほど短い。それほど私たちは濃い時間を共有している、ということなのだろう。彼が言う。

「いつも思っているよ。どうしたら目の前の相手に満足して帰ってもらえるだろう、って。俺といてうれしいと思ってもらえるかなってね。口に出さなくても、そう意識するだけで、全然ちがうんだ。非言語で伝わってしまうものがあるんだよ」

言葉は頼りない。ときにはボコボコにされた。もちろん、支えられたことだって何度もある。それでも人の体温には代えられない。それは抱きしめてほしいことを言わなくてもわかって、察して、なんてもんじゃない。逆だ。抱きしめられて、ようやく、あ、わたしが求めていたのはこれだったんだ、ということを教えられてしまう。感情より先に涙が出る、あの感覚。心が大きく動いた何よりの証拠だった。私は彼のメロディーに耳を澄ませる。
その他
公開:18/04/06 22:02
更新:18/04/08 22:00
小説 短編 ショートショート 400字物語 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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