彼とコーヒー5

2
156

在るっていう言葉、すごく好きだな。彼はそう言ってブレンドコーヒーを一口飲む。
「多くの人は方法を求める。でも、本当に大事なのは在り方なんだよ。自分がどう在りたいか。その根っこの部分がしっかりしていれば、これでうまくいかなきゃ人生おしまい、なんてことはない。やり方は色々あるからね」
私もカップを持ち上げてつぶやく。在り方、かあ。
「じゃあ、どんな風に?」
首を傾げれば、彼はカップを置いてまっすぐにこちらを見る。その目力に私は圧倒されてしまう。
「シンプルであること。自分を好きでいること。人と真剣に向き合うこと」
この3つかな。すぐに返ってきた答えを急いでメモした。彼が手渡してくれる大切なものをちゃんと受け取って、自分の中にその存在を確かめるみたいに。
「今はそれでいいと思う。あとは自分で試してみながら、自分の在り方を見つけてごらん」
私の在り方。それを自分で決めることは自由のにおいがした。
その他
公開:18/04/08 18:57
更新:18/04/08 22:16
短編 ショートショート 400字物語 小説 一話完結 各話完結 連載

yuna

400字のことばを紡ぎます。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容