携帯越しの彼

彼は私のことを好きだ。
もちろん私も。

彼は一人で頑張っているけど、淋しがり屋なので時折私のことを呼びつけ最新の話題で盛り上がっている。それを私は見ているだけ。
でも次の瞬間彼は違うことに夢中になる。私などいないように…
いつも私は寂しさを隠して彼を抱きしめる。

彼は何にでも興味があるから何処へでも出かけ必要な情報を集めて吸収しているようだ。今日の彼は昨日の彼より成長している、確実に。

私の存在は彼が疲れはて癒しを求めるときにだけ必要とされるのか…
一つ言えるのは彼には私が必要なのだ。私が居なくなったら彼は途方に暮れ、どこにも行けず何も考えられなくなりお先真っ暗となるだろう。代わりの誰かが現れるのを静かに待つしかないのだ。
私が彼にパワーを与えている。

今日も彼のモーニングコールで起きる。私と彼の一日が始まる。

あっ充電のし忘れ！
残量3％…
満員電車で彼は力尽きてしまった。